


保育士の視点から、子どもたちの日常を切り取り、当園が大切にしている保育のカタチをお届けします。
家事や仕事の合間に、ホッと一息つきながら読んでいただければ幸いです。
*連載「道草を踊る」イントロダクションへ遷移します
※過去の記事はこちら
こんにちは!フレーベル西が丘みらい園です。
前回の記事*では、3〜5歳児たちがこれまでの経験を活かし、仲間と協力して「テント(自分の居場所)」を作り上げる姿をお伝えしました。
*: 「心地よい」を創り出す|連載 道草を踊る vol_07 へ遷移します
今回は、春の1歳児クラスの様子について、保育士へのインタビューから見えてきた、乳児期ならではの深い探究の姿をお届けします。
大きな人たちがダイナミックに世界を広げる一方で、小さな人たちはどのように新しい環境に触れていくのでしょうか。
ぜひ最後までご覧ください。
4・5月といえば、人見知りや場所見知りで涙が出ることも多い時期ですが、今年度の1歳児クラスは始まりから、驚くほど穏やかで落ち着いています。
その裏には、前年度の終わりから数ヶ月をかけて計画された、丁寧な「移行期間」の工夫がありました。
新しい担任(大人)と関係を作る前に、まずは新しい部屋に慣れる期間を長くとりました。4月は、子どもたちが安心して遊べるようになった環境に、大人が後から「入れてもらってもいいですか?」といった感じで、そっと混ぜてもらったんです。
さらに、その安心感を支えたのが「0歳児クラスの畳」でした。
これまで慣れ親しんだ畳を、そのまま1歳児クラスの部屋に設置。「新たな居場所」に設定しました。
見慣れた景色、ほのかな草の香り、いつもの肌触り。
その小さな空間で、保育士の膝に座って絵本を読むうちに、子どもたちの心は自然とほぐれ、大人との距離もすっと縮まっていきました。
今、クラスで大人気なのが歌絵本や紙芝居。
1歳児の子どもたちは、絵本の世界と現実を自由に行き来しています。
絵本の中で泣いている子がいれば、自分がされているように「いいこいいこ」と優しくページをなでる、そんな愛らしい姿が見られます。
そんな中、担任はある子の「こだわり」に目が留まりました。『てんぐだるまの紙芝居*』を読んだ時の話です。
*: 『紙芝居 にらめっこしましょあっぷっぷ!』/作・絵: 長野 ヒデ子/出版社: 童心社
その子にとって、てんぐだるまは「怖い」存在なんです。でも、怯むけれど、見たい。葛藤しながら「もう一回!もう一回!」と保育士に読んでほしいとお願いしては、やっぱり「怖い!」。その繰り返しを楽しんでいるようでした。
大人の感覚だと「怖いなら隠そうか」と思いがちですが、結果的にとても関心が高い様子だったので、担任は、「見たい」という気持ちを大事にしてあげたいと思いました。
「隠してしまうと怖い気持ちだけ残るのかな」と考え、オープンにしていくようにしました。
そこで、てんぐだるまの絵をラミネートして、子どもの目線の高さに貼り出してみました。
怖がってしまうかなと思って見守っていると、なんと今度は、じっと観察をしていたんです。よーく観察するうちに、てんぐだるまの長い鼻や口を大きく開けて笑う顔の面白さに気が付いていった様子。表情や動きを真似しているうちに、今では「てんぐだーま」と言葉に出して親しんでいます。
いつの間にか「恐怖」が消え、「仲間」になっている姿に、驚きと感心で胸がいっぱいになった瞬間です。
このエピソードを聞いた他の保育士たちからも、コメントが飛び交いました。
保育園で「怖い」という気持ちに向き合う機会ってなかなかないですよね。だから、「怖いものを見たい」という子どもの気持ちを丁寧に受け止めていくことも必要ですよね。
節分の鬼も、子どもたちにとって怖いものです。みらい園では節分の意味を大切に伝えるため、怖い鬼は登場しません。嫌なのに怖い鬼が迫ってくる!というようなやり方は、子どもにとってつらいことです。しかし今回のように、「怖い」と思うものに自分が興味を持ったタイミングで近づいて、「あ、やっぱり怖いな」と自分の心と対話する機会があることは素敵なことだと思います。一見ネガティブな感情も、シャットアウトせずに大事にできたらと、改めて気づかせてもらいました。
未知のものって怖いですよね。でも、日本のお面などもそうですが、怖いだけじゃない美しさと言いますか、不思議な魅力がそこにはあります。
「怖い=強い興味がある」ということでもあるのかと思います。
大人や友達が発する言葉の意味を完全につかむ前に、真似して発することもあります。表情や音、仕草を丸ごとインプットして、その「真似」から言葉を学んでいきます。「怖い」を、様々な感情を表す言葉として代用しているのかも。
月齢の違いがある集団だからこそ、お互いに真似し合って世界が広がる面白さがありますね。
昨年度の「おばけやしきごっこ」でも、子どもたちは「おばけ」への興味からたくさんのことを学びました。
今回の「てんぐだるま」への関心も、まさにその根っこに繋がっています。
いたずらに怖がらせるのではなく、子どもたちの「知りたい!」という探究心を満たしてあげること。
1歳児は言葉こそ少なくとも、動きや表情といった仕草一つひとつに、豊かな表現が溢れています。
子どもが世界に触れ、知っていくプロセスを、私たちはこれからもつかず離れずの距離感で見守り支えていきます。
子どもたちが「これ怖い!」と言いつつも、「また見てみたい……」と興味をもつことってありますよね。
大人が怖いもの見たさでホラー映画を観るのと似ているのかもしれません。
自分のタイミングで、自分の気持ちに触れ、確かめようとしているのです。子どもたちが「わからない世界」を一生懸命に観察し、自分のものにしようと冒険しているサインかもしれませんね。
次回の「連載|道草を踊る」もお楽しみに!